| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-027 (Poster presentation)
東南アジア熱帯地域は生物多様性と炭素蓄積量が極めて高いことでよく知られている。耕作放棄地や山火事跡地などでは二次林が形成され,生物多様性の維持や炭素蓄積といった森林の機能が回復することが期待される。多孔菌類は森林の枯死木の分解者として知られており,森林内の多孔菌類相は,枯死木の蓄積量や種類を反映しているものと考えられる。そこで本研究では,東南アジア熱帯地域において林齢や枯死木量といった環境要因が多孔菌相に及ぼす影響を明らかにするために,ボルネオ島北部とマレー半島中部のマレーシア領内に残存する二次林において,野外調査を行った。
ボルネオ島では2017年8月および2018年3月に計13林分,マレー半島では2018年11月に計8林分で20×20mの方形プロットを設置して,内部の枯死木量と多孔菌の子実体の発生の有無を調べた。多孔菌については,あらかじめ選定した19種を対象にした。また,林齢や樹木の種数,平均胸高直径,地上部現存量,開空度についても情報を得た。
その結果,倒木については,その体積は若齢林でも高い場合が認められたが,立ち枯れ木については,林齢が40年を超える森林で高い傾向が認められた。また,開空度は林齢とともに減少した。菌類については調査対象とした菌のうちHexagonia tenuisは若齢林にのみ認められる傾向があった。Pyrofomes albomarginatumのように老齢林でのみ見られた菌もあったが,出現頻度が小さかった。その他の環境要因と出現頻度の間に明瞭な関係がある菌腫は認められなかった。
熱帯地域では二次林における多孔菌類の生物多様性が原生林の程度までに回復するのに150年程度を要すると推定されている。本研究では老齢林に出現すると期待された種がほとんど認められなかったが,その要因として,最も古い林分でも林齢が80年程度でかつ面積も小さかったことが考えられる。老齢二次林でのさらなる調査が必要である。