| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-035 (Poster presentation)
日本の森林植生は,亜寒帯常緑針葉樹林,冷温帯落葉広葉樹林,中間温帯林,モミ・ツガ林,常緑広葉樹林,亜熱帯林に区分され,各植生帯の境界は温量指数(暖かさ・寒さの指数)に良く対応することが明らかにされている。しかし、日本の森林植生帯研究では,モミ・ツガ林の気候的な位置づけが明確にされておらず、また各植生帯の分布と気候条件の関係について、統計解析などによる客観的な評価も行われていない。本研究の目的は,高解像度の植生図と最新の分布予測モデルをもとに,日本の森林植生帯の分布構造の検証を行うことである。解析データには,環境省の自然環境基礎調査(第6~7回)の四国地方の1/25,000植生図を使用した。凡例をもとに,7つの自然植生(常緑広葉樹林,暖温帯針葉樹林,冷温帯針葉樹林,落葉広葉樹林,亜高山帯広葉樹林,ササ群落,亜高山帯針葉樹林)を抽出し,3次メッシュごとの分布データを作成した。植生図とデジタル標高モデル,メッシュ気候値(暖かさの指数、最寒月の月最低気温の平均値、夏期降水量,冬期降水量)を重ね合わせ,多項ロジットモデル(ソフトマックス回帰)により,植生分布モデルを構築した。解析の結果、暖かさの指数と最寒月の月最低気温の平均値のレンジの組み合わせでは、暖温帯・冷温帯針葉樹林の分布確率は常緑広葉樹林や冷温体落葉広葉樹林の分布確率よりも小さかった。しかし、夏期降水量が多い地域では、暖温帯・冷温帯針葉樹林の分布確率が上昇することが明らかとなった。以上のことから、暖温帯・冷温帯針葉樹林は、太平洋沿岸の降水量の多い地域に位置づけられる植生帯であることが明らかとなった。