| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-036 (Poster presentation)
近年急速に発達を遂げた低価格の無人航空機 (ドローン) は、詳細な森林構造を簡便に検出できる手段として注目されている。特にこれまで複数の樹種が混交する落葉広葉樹林において樹木毎の種や位置の特定が困難であったが、ドローンを用いた手法であれば可能になると予測された。本研究ではドローンによって得られる超高解像度 (空間解像度;約2 cm) の空撮画像から、画像解析を用いてこれらの林分における個体毎の樹種と位置の特定を試みた。
対象は岐阜県高山市の冷温帯落葉広葉樹林のコドラート内 (1 ha) とした。3つの季節 (展葉期、紅葉期、落葉期) において、ドローンを用いて対象の真上から複数の画像を撮影した。これらの画像を合成ソフトによって複合し、各季節のオルソ画像を取得した。これらとフィールドワークで得られた毎木調査のデータを地理情報システム上で比較し、樹種と位置の特定を行った。
展葉期においては、主要な構成種である落葉広葉樹 (ミズナラやカバノキ属など) のうち、樹頂が林冠に到達している太い個体の樹種とおおよその位置が葉の形状の違いによって特定された。しかし、近接した同種の個体の識別は困難であった。一方、数本存在する常緑針葉樹 (ウラジロモミ) は、林冠構造が単純で直立しているため容易に特定された。紅葉期においては、各樹種のフェノロジーに依存する葉の色づきの差によって各個体が詳細に識別された。また、林冠に到達していない細い個体においても、林冠木の葉の一部が落葉したため下層の林冠が確認できるようになり、樹種とおおよその位置が特定された。落葉期においては、ほとんどの個体が落葉したため各個体の根元が確認できるようになり、全個体の詳細な位置が特定された。これらの結果は、ドローンが詳細な森林構造を検出するための有効な手段であること、また落葉広葉樹林においては複数の季節において撮影した画像の比較が樹種と位置の特定に役立つことを示している。