| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-037 (Poster presentation)
ヨーロッパ、日本を含む温帯林における植物社会学的方法による植生学的研究は多く為されているが、熱帯域におけるそれについての報告は多くはない。発表者は近年、旧熱帯区における植物社会学的調査を行い、マレーシアとケニヤにおける山地林の組成比較によってその共通性と相違を明らかにしてきた。
本報告では、その両地域における特殊立地上に出現、成立している植生についての種組成上の特徴を明らかにすることを目的とする。
マレーシアでは超苦鉄質岩を含む超塩基性岩に成立しているクロッカーレンジおよびキナバル国立公園周辺の森林群落について調査を行った。その結果、通常の山地林構成種であるShorea pauciflora, S. parvistipulata, S. parvifolia, Parashorea malaanonan などの他に、Euonymus glandulotus, Embelia myrtillus, Ardisia macrophylla, Prunus javanica, Ternstroemia bacana, Illicium kinabaluensisなど温帯域で見られる属やアフリカに出現する森林を構成する属との共通性があった。
ケニヤではChyulu Hills国立公園に残存していた山地林について調査を行った。当該地は約140万年前から完新世にできた角閃石およびアルカリ玄武岩を含む溶岩が基岩となっており、その上に成立する比較的若い、いわゆるAfromontane林に相当する。そこでは通常林冠を構成するOcotea kenyensis, O. usambarensis, Podocarpus latifoliusなどは出現せず、Prunus africana や Ilex mitisが優占していた。これは現存するAfromontane林では初めてのタイプに当たり、レフィージアの性格を物語る一型と考えられた。海岸近いArabuko-Sokokeでは砂質土壌上に多くのマメ科樹種を含む群落が成立していた。Hymenaea verrucosa 群落、Brachystegia spiciformis 群落およびBrachyleana huilensis 群落が抽出され、先の二つの群落はそれぞれ互いに自然植生および代償植生の関係であることがわかり、Brachyleana huilensis 群落は独立した群落であることが明らかになった。