| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-040 (Poster presentation)
西表島の隆起サンゴ礁における林分構造と希少植物の生育環境
*指村 奈穂子(琉球大学)、 内貴 章世(琉球大学)、 遠山 弘法(琉球大学)、 大谷 雅人(兵庫県立大学)、 澤田 佳宏(兵庫県立大学)、 古本 良(林育セ)、 横川 昌史(大阪自然史博物館)
西表島の海沿いには隆起サンゴ礁から成る石灰岩地が点在しており、特徴的な種からなる林分が発達し、分布が狭く個体数の少ない希少植物も生育する。本研究では、石灰岩地の林分構造の特徴と、希少植物(クサミズキ、ナガバコバンモチ、シマソケイ)の分布パターンを明らかにすることを目的とする。
西表島内の石灰岩地・非石灰岩地を含む70箇所に5m×10mの小区を10個並べた調査区を設置し、出現種を小区ごとに記録し、木本種の胸高直径(1cm以上)を測定した。胸高直径から断面積合計と変動計数を算出し、GISで地形と地質に関する環境要因を集計した。各種の出現頻度と環境要因を用いてnMDSとCluster分析を行った。希少植物の小区ごとの在不在と環境要因を用いてMaxentを行った。
Cluster分析により、調査区は先駆樹種の多い荒れた林分と高標高域の比較的安定した林分に分かれた。荒れた林分のうち一部が、特徴的な種を含む石灰岩地の林分に分かれた。荒れた林分と安定した林分の両方から、地形的に傾斜やTPI、SPIの大きい、湿った環境の林分が分かれた。石灰岩地では出現種数が多くないが、他グループとは異なる種が出現するため、島全体の種多様性の向上に貢献していた。
クサミズキ、ナガバコバンモチ、シマソケイは、いずれも荒れた林分(断面積合計や変動計数の小さい撹乱地)に生育していた。クサミズキは伐採等の人為撹乱地、ナガバコバンモチは谷部の河川撹乱地、シマソケイは段丘崖の斜面崩壊地に主に出現した。石灰岩地に偏るのはシマソケイだけであり、地質だけでなく撹乱体制の違いが、希少植物の生育を可能にしている。