| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-047 (Poster presentation)
福島県会津若松市にある赤井谷地(福島県会津若松市;海抜525m,面積43.6ha)は池沼から発達した高層湿原で,数種のミズゴケ,ホロムイソウ,ホロムイイチゴなどの北方系植物が生育することで,1928年に国の天然記念物に指定された。しかし,湿原周囲は古来より水田として利用されてきた経緯があり,湿原内の水環境や湿原植生に変化が生じた。そのため,水田に緩衝機能を設けた湿原再生地とし,2002年以降,耕作停止,公有化,追加指定,植生復元が進められている。また,それ以前にも短期間,水田として利用された後,放棄された地域ではミズゴケを伴う湿原植生や低木林が発達している。
ここでは,赤井谷地周囲の水田跡地が緩衝地として機能する可能性があるかを明らかにするために,1992年以降,複数回にわたり植生調査を行った。
確認された群落とその特徴は次のとおりであった。オオミズゴケ群落:ツルコケモモ,ヌマガヤなどが出現し,湿原に隣接する耕作期間が短く,客土されていない古い水田跡地に成立する。ヨシ群落:ヒメシダ,アゼスゲなどが出現し,泥炭土が厚く,客土がされていない過湿な水田跡地に成立する。ススキ群落:チマキザサ,ノイバラなどが出現し,乾性で放棄期間が長い水田跡に成立する。ノリウツギ群落:畦畔にノリウツギやレンゲツツジなどが低木マントを形成し,ヤマドリゼンマイなどがわずかに出現する。古い水田跡地に出現する。アブラガヤ群落:アメリカセンダングサ,ミゾソバなどの1年草が混生し,耕作放棄後の初期に成立する一時的な湿性地群落にあたる。セイタカアワダチソウ群落:イグサ,アカバナなどが出現し,アブラガヤ群落から遷移した一時的に成立する。ヤナギ群落:数種のヤナギが林冠を形成する低木林で,客土された水田跡地に成立する。これらは耕作方法,放棄後の経過年数,水環境など,複合された要因によって成立していた。