| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-048  (Poster presentation)

北アルプスから中央アルプスにかけた数十年間のササとハイマツの被覆率変化
Quantification of vegetation change (Sasa spp. & Pinus pumila) during decades from  the Northern Alps to Central Alps

*雨谷教弘(国立環境研究所), 大西正道(アジア航測 (株)), 高橋耕一(信州大学・理), 下野綾子(東邦大学・理), 小熊宏之(国立環境研究所)
*Yukihiro Amagai(NIES), Seido Ohnishi(ASIA AIR SURVEY Co., Ltd.), Koichi Takahashi(Shinshu Univ.), Ayako Shimono(Toho Univ.), Hiroyuki Oguma(NIES)

高山植物の分布は、積雪・生育環境の影響を強く受け、それぞれの環境に応じ様々な植物種・群落が成立している。一方、近年の気候変動の影響により、高山帯でも植物種の移動や種多様性が変化していることが示唆されている。植生変化の中で特に顕著なのが、ハイマツとササの分布拡大である。ハイマツとササは、高山帯において、その高いバイオマスによる土壌栄養状態の改変、強い蒸散力、高い背丈による被圧など、他の高山植物に対して大きな影響を持つ。北海道の大雪山では、増加が顕著な五色ヶ原では32年間でハイマツが14.4%・チシマザサが25.9%増加し、北部‐中部大雪の広域(約203㎢)解析でもそれらの合計面積は10%弱の増加が明らかとなっている。
 一方、山岳地域の地質、地形、気象環境は山域ごとに様々であり、特に本州と北海道では植物種の組成・群落の分布が大きく異なる。そのため、本州と北海道の山域では、ハイマツ・ササに関する分布拡大の挙動が異なる可能性がある。そこで、北アルプス北部の立山において、1977年と2010年の航空写真からハイマツとササの33年間の被覆率変化を求めた。更に、ハイマツにおいては北アルプス南部の乗鞍岳、中央アルプス最高峰の木曽駒ヶ岳でも同様に、過去と現在の被覆率とその変化面積を求めた(ササは他の植生と混在するか、高山帯での面積が僅かであるため今回は比較の対象としなかった)。その結果、立山ではハイマツ・ササともに分布を拡大し、その拡大率は大雪山と同程度の値を示していた。また、乗鞍岳・木曽駒ヶ岳においてもハイマツの分布面積が増加している傾向が得られた。以上のことから、大雪山同様に本州の各高山帯においてもハイマツとササの分布拡大が定量的に明らかとなった。一方で、これら山域の種組成は異なることから、ハイマツ・ササの拡大影響も異なると予想され、他の高山植生への影響を踏まえ早急な対策を行う必要があることが示唆された。


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