| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-049 (Poster presentation)
鳥取砂丘はその一部が国の天然記念物と国定公園に指定され保全されている。指定地である天然記念物鳥取砂丘は地域を代表する観光地であるが,そのことにより踏圧等による植生への影響も一部に見られる。天然記念物鳥取砂丘の西側には,隣接して鳥取大学乾燥地研究センターが設置されており,100 haほどの砂丘地(以下,乾地研砂丘)が存在する。乾地研砂丘では半世紀以上にわたり研究目的のために人為かく乱が最小限に抑えられており,人為の影響を排した砂丘研究に適している。これまで乾地研砂丘全体の海浜植生構造は明らかになっていないことから,本研究では小型の無人航空機画像により,乾地研砂丘全域の植生分布を面的に把握し,成帯構造の詳細とその分布要因を明らかにすることを目的とした。汀線から内陸にかけて6本の調査測線を設定し,連続して植生調査を行った。無人航空機による地上90 mからの可視光画像を使ってオルソフォトを出力し,これを使ってArcGIS上で主要植物種の分布判定を試みた。植生調査の方形区で被度20%以上が記録されたネコノシタ,ケカモノハシ,ハマゴウ,カワラヨモギ,オニシバ,オオフタバムグラの6種を対象に在/不在データを作製し,これを教師データとしてオルソフォトを教師付き分類した。汀線からの植物種の移り変わりには砂丘内の位置による違いがみられた。これを多重ロジスティック回帰分析により解析したところ,有意な説明変数としてネコノシタで汀線からの距離,ケカモノハシとハマゴウで千代川河口から東への距離,カワラヨモギで標高と傾斜角が検出された。本研究は,小型無人航空機による画像から海浜の代表的な6種を高い分類精度で分類できることを示した。海浜植生は種組成が単純なことから小型無人航空機活用に適しており,今後の植物の分布変化を面的に把握しやすくなることが期待される。