| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-051 (Poster presentation)
農地の多面的機能に対する評価として、生物多様性や景観の異質性に着目した様々な評価指標や評価方法がある。しかしながら、農業生産機能と生物多様性の両立をしている農地に関する指標はない。FAOの認定する世界農業遺産は、地域が自主申請するもので、農業生産機能と生物多様性のどちらも両立できている農地は他にもあることが想定される。また、既存研究から、近代農業の基盤である圃場整備を施した農地には、絶滅危惧植物が分布しなくなる傾向が顕著であり、少なくとも食料生産機能と生物多様性保全機能の維持とはトレードオフの関係にあると指摘されている。そこで、本研究では、関東地方を対象にトレードオフの関係にある食料生産機能と生物多様性保全機能の両立がなされている農地を抽出することを目的とした。
食料生産機能と生物多様性保全機能の評価地図をArcGISで作成し、重ね合わせることによって食料生産機能と生物多様性保全機能の両立がなされている農地を抽出した。農地の食料生産機能の評価指標として、①一戸当たり農産物推定販売額、②土地生産性、③労働生産性を2015年農林業センサスより算出した。生物多様性保全機能の指標は、広域に分布し、かつ分布域の大部分で絶滅の危機に瀕している植物種の分布記録を用いた。データは環境省生物多様性センターから入手した。
抽出された農地のうち、畑地農地が38.5%と最も多かった。畑地農地の定義は「耕地面積に対する田の割合が30%未満」であり、水田だけでなく畑や樹園地も有している農地ほど食料生産機能と生物多様性保全機能を両立できるのだと考えられた。