| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-057  (Poster presentation)

中国河北省張家口市蔚県における湿地公園の自然再生計画および周辺の土地利用と植物相
Nature Restoration plan of wetland, and the neighboring land use and floras at in Yuxian, Zhangjiakou Shi, Hebei Sheng, China

*大窪久美子(信州大学農学部), 前中久行((NPO)GEN), 高見邦雄((NPO)GEN)
*Kumiko OKUBO(Shinshu Univ.), Hisayuki Maenaka((NPO)Green earth network), Kunio Takami((NPO)Green earth network)

1980年代以降、急速な経済発展を遂げている中国では、近年、環境問題や自然保護、景観保全や緑化に対する関心が高まり、自然再生に関する研究や事業が進められるようになってきた。本研究では中国河北省張家口市蔚県の河北蔚県壺流国家湿地公園における在来植生の復元や郷土樹木園の計画、管理等の自然再生計画に寄与するため、まず現地および周辺地域の景観要素に関する基礎的情報を収集することを目的とした。
蔚県は黄土高原の東北部に位置しており、平均標高は1000~1500mであるが、壺流国家湿地公園は約900mと低く、本壺流河域の年降水量は411㎜、年平均気温は6.5℃で、気候区としては大陸性季節風気候中的温帯乾燥区に属する(河北蔚県壺流河国家湿地公園総体計画(2017-2020))。また、現地周辺は山岳地域で、特に南部には2000m級の山脈が連なる盆地の底部である。
景観要素に関する基礎的情報としては、湿地公園および周辺山岳地域において植物相および植生、土地利用等に関する調査を2018年夏季に実施した。
湿地公園では、「河北蔚県壺流河国家湿地公園総体計画(2017-2020)」において272種の維管束植物が記載されているが、調査の結果、湿地植生としてはヨシやガマ類、マコモ等の高茎抽水植物が優占する群落やヒルムシロやフサモ、タヌキモ属等の沈水植物群落の分布が確認された。湿地植生の周辺の地形や植生状況から無秩序な土地の改変がうかがわれたが、これらの荒地では日本ではRDB種にしてされるハマビシやオナモミが普通種として生育していた。公園予定地でもヒツジ等の家畜の放牧が行われており、被食の影響を受けないキンポウゲ属やアカザ属、オグルマ属等を確認した。一方、蔚県郊外の標高1450~1800m程度の山岳地域3箇所では、カバノキ属やハシバミ属等の在来夏緑広葉樹等の優占植生が残存していることが認められた。


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