| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-059  (Poster presentation)

分布北限におけるサシバの生息地評価: 北の猛禽ノスリと餌生物ハタネズミの影響を探る
Habitat evaluations of gray-faced buzzards in their northern boundary

*藤田剛(東京大学), 東淳樹(岩手大学), 宮下直(東京大学)
*Go FUJITA(Univ. of Tokyo), Atsuki AZUMA(Iwate Univ.), Tadashi MIYASHITA(Univ. of Tokyo)

 ある地域の種プールは、気候帯のようなマクロスケールの現象に規定される。複数の気候帯に分布する高次捕食者の保全を図る際、種プールの違いが、餌生物の種組成や局所分布に影響するだけでなく、競争関係にある他の捕食者密度と分布に影響する可能性もあり、複数の栄養段階にわたる影響を組込んだ保全策が重要になると考えられる。
 種プールの影響を調べるのに適した高次捕食者として、農地景観の猛禽サシバが挙げられる。分布北限の東北から薩南諸島まで広く分布し、分布中心では水田のカエルを主な食物とすることが示されている。しかし、冷涼な分布北限ではカエルの発生が遅く、利用可能な時期が短い可能性が高い。
 本研究では、北限のサシバが利用可能な餌生物として、ネズミ類に注目する。ネズミ類は高緯度地方の中型猛禽の主要食物として知られ、国内ではノスリ等の主要食物である。ノスリの分布中心は東北より北方にあるが、東北から中部にかけサシバと分布域が重なっている。農地景観でサシバと同所的に繁殖しているだけでなく、カエルを頻繁に捕食するなど食物メニューも類似しており、サシバと競争関係にあると予想される。
 サシバの分布北限に位置する岩手県中部の農地 (5 x 4km) を対象に、サシバおよびノスリの分布とネズミ類とカエル類の分布とその季節変化を調べ、サシバの繁殖を13か所、ノスリの繁殖を33か所で確認した。記録されたカエル類のほとんどはトウキョウダルマガエルで、その発生ピークは予想どおり猛禽の繁殖後期だった。捕獲されたネズミ類のほとんどはハタネズミで、その密度は猛禽類の繁殖期を通して高かったが繁殖後期に低下した。そして、サシバとノスリ、ともにハタネズミとカエルの生息密度が高い場所に繁殖する傾向があった。
 演者らは今後、これら餌生物の分布と景観構造の関係を調べるとともに、ノスリによるサシバへの影響解明を目指す予定である。


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