| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-070  (Poster presentation)

捕食者のカニがテナガツノヤドカリの行動に及ぼす非消費効果
Non-consumptive effects of a predatory crab on behavior of the hermit crab Diogenes nitidimanus

*古賀庸憲(和歌山大学), 上村了美(大阪市立大学), 岩本侑真(和歌山大学), 石原(安田)千晶(北海道大学), 吉野健児(国水研)
*Tsunenori Koga(Wakayama Univ.), Satomi Kamimura(Osaka City Univ.), Yuma Iwamoto(Wakayama Univ.), Chiaki Ishihara Yasuda(Hokkaido Univ.), Kenji Yoshino(NIMD)

エサ生物と捕食者間の相互作用は、生態学において最も盛んに研究される分野の一つである。エサ生物は捕食リスクによりストレスを受け、生存の機会を高めるために形態や行動を変化させることがある。干潟に生息する小形のヤドカリの1種テナガツノヤドカリは、同所的に生息するワタリガニの1種イシガニによく捕食されていると予想される。そこで本研究では、テナガツノヤドカリがイシガニの捕食リスクに対して、どのようにストレスを受け、行動を変化させるのかを、室内実験により検証した。ヤドカリの各個体を、(1) 生きた同種ヤドカリの殻を割り食べる捕食者(イシガニ)、(2) 市販のエサを食べる捕食者、(3) 同種ヤドカリの死骸、または (4) 海水のみ(=コントロール)が入った水槽で2週間の飼育実験を行った。実験中、ヤドカリへは3日ごとに市販のエサを給餌した。実験後、ヤドカリの死亡率と、摂餌率、捕食者からの回避の程度を目的変数とし、4つの処理群と雌雄、ヤドカリの体サイズを説明変数として解析を行った。その結果、死亡率はコントロールと比べ2つの捕食者群で、そして小さい個体ほど、高かった。すなわち、よりストレスを受けていた。摂餌率は同じく2つの捕食者群で、そしてメスで低く、よりストレスを受けていた。回避の程度は現時点の解析では、同種ヤドカリを食べる捕食者群と、メスで、また大きな個体ほど、高かった。すなわち、生存の機会を高めるような行動の変化が見られた。したがって、概ね捕食者によるストレスをより強く受ける条件下において、生存の機会を高めるように行動を変化させたと考えられる。なお本研究は、科学研究費および文部科学省「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(牽引型)」平成30年度連携型共同研究助成の支援を受けて行った。


日本生態学会