| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-074 (Poster presentation)
環境DNA分析手法は、環境中にあるDNA断片を検出することによって、そこに生息する対象生物をモニタリングすることができる。DNAの塩基配列はその生物の状態や発生段階に依存しないため、環境DNA分析手法ではその生物の成長段階や状態の区別は困難であるということである。この問題を解決するために環境RNA分析手法が挙げられる。
環境DNA分析手法と同じように、生き物が放出したRNAを環境中から得ることで、環境DNAでは得られなかった情報が得られるかもしれない。生物個体の体細胞は、基本的に全て同じDNAをもつが、成長の段階や組織によって異なる細胞が生成される(細胞分化)。これは成長の段階や組織によって発現する遺伝子が異なり、合成されるタンパク質が異なっていることが原因である。成長段階に関わる遺伝⼦の発現に関与する環境RNAを検出できれば、環境RNAを用いて生物の状態や成長段階を推定できると考えられる。野外におけるRNAは分解されやすいため、検出しにくいと言われている。本研究では、野外におけるコイの環境RNAの検出することを目的としている。結果として、「Cytochrome b」及び「ITS1」遺伝子領域を対象として設計したプライマープローブを用いて環境RNA分析を行い、水サンプルからこれらのRNAを検出した。このように一般的に知られている「Cytochrome b」遺伝子が特異的に発現するRNAなどが検出されたことから、野外におけるコイの繁殖に関与するRNAを検出できたら、繁殖行動を推定することもできるかと考えられる。