| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-075 (Poster presentation)
音響信号によって種内のコミュニケーションをおこなう生物は多い。例えば、雛が親鳥にエサを請う鳴き声や、群れの他個体に捕食者の接近を伝える警戒声などがある。なかでもオスがメスに音響信号で求愛することは様々な動物で知られている。求愛の際に発せられる音響信号は主に発信者の場所や遺伝的な質といった発信者の属性をメスに伝える働きを持つ。その際に、同所的に生息する他種が同時に音を発すると雌雄間の音響コミュニケーションが妨げられる可能性が生じる。例えば、ヒトの出す騒音が鳥やカエルなどの音響コミュニケーションを妨げることが知られている。タイワンエンマコオロギTeleogryllus occipitalis(以下エンマ)とネッタイオカメコオロギLoxoblemmus equestris(以下オカメ)は奄美大島内の小規模な生息場所にも同所的に生息するコオロギである。この2種間には激しい干渉型の種間競争が見られ、エンマが一方的に優勢であることが知られている。それにも関わらず両者が同所的に生息できるのは、エンマがオカメから音響信号の干渉を受けており、繁殖成功が大きく減少しているからかも知れない。そこで、エンマのメスがオスを定位する際に、オカメの音響信号からどの程度影響を受けているのかをPlayback実験を基に検証した。その結果、エンマのメスの配偶行動はオカメの音響信号によって有意な影響を受けていないことが明らかになった。したがって、オカメの音響信号による求愛への干渉は両種が同所的に生息できる理由にはなっておらず、他のメカニズムが働いていることが示唆された。