| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-076 (Poster presentation)
ブナ堅果の豊凶は、ツキノワグマやノネズミなどの果実食哺乳類の行動に影響を与えることがこれまで報告されてきた。広大なブナ林が優占する地域もみられる東北地方では、餌となる植物の多様度が相対的に低いため、ブナの豊凶が野生哺乳類に与える影響はより顕著である可能性がある。そこで本研究では、ブナ林が広域に分布する東北地方日本海側において、ブナ堅果の豊凶が哺乳類に与える影響について、当該種を餌資源とする哺乳類4種(ツキノワグマ、ニホンザル、タヌキ、ニホンリス)の活動時間と土地利用に着目し評価した。青森県から山形県にかけて、ブナ林3か所(青森・山形庄内・山形小国)に調査サイトを設置した。ブナ堅果豊作年である2015年と、凶作年である2016年のブナ結実期(夏秋期;8月から11月)および、翌年の融雪後(豊作翌年:2016年、凶作翌年;2017年)のブナ結実期前(春夏期;5月から7月末)に、各サイトに、計4台の自動撮影カメラを設置する1km四方のプロットを8か所設定し、計32台のカメラを設置した(合計32,100カメラ日)。カメラトラップで撮影されたこれら4種の哺乳類を対象として、豊作年と凶作年において、哺乳類の活動時間と土地利用について評価した。その結果、1)夏秋期にクマの活動時間は変化するが、翌年の春夏期の活動時間は変化しないこと、2) クマは、豊作年には薄明薄暮や夜間に活動し、凶作年には昼間に活動すること、3) 夏秋期および春夏期ともに、クマ以外の哺乳類の活動時間は変化しないこと、4) クマは、豊作年には広葉樹林を利用するが、凶作年には針葉樹林を選択的に利用すること、5) クマ以外の哺乳類は、豊凶による土地利用の変化がみられないことなどが明らかとなった。