| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-085  (Poster presentation)

抱卵期のウミネコの酸化ストレス変化
Change of oxidative stress in black tailed gull during incubation period.

*水谷友一, 依田憲(名大院環境学研究科)
*Mizutani YUICHI, Ken Yoda(Environmental, Nagoya univ.)

海鳥類の行動、特に採餌行動追跡について、採餌戦略の解明に向けたバイオロギングによる野外検証研究が盛んである。中でも雑食性のカモメ科のウミネコLarus crassirostrisの採餌旅行には、繁殖地から近く安定的に餌獲得が見込める“内陸型”と、繁殖地から遠方の海洋で餌探索をする“海洋型”があるが、このような採餌場所の違いによる採餌行動のコストは、生理状態へ影響しているのか。本研究では、青森県八戸市蕪島で繁殖しているウミネコを対象に、目的地の違いが採餌行動の生理学的コストが生じているのか、バイオロギングによる行動記録と行動記録中の生理学的コストを評価し関係を検証した。生理学的コスト評価には、近年ヒトで酸化バランスの臨床的有用性を示されている酸化ストレス (d-ROMs)と抗酸化力 (BAP)を測定し、酸化バランスは抗酸化値/酸化ストレス値 (B/R)を用いた。2018年に繁殖中のウミネコ親鳥を捕獲してGPS・加速度ロガーを装着し、6-26日間の行動データを取得し、ロガーの装着と回収の捕獲時には採血を行った。採集した22個体の血漿成分からd-ROMs値とBAP値を測定し、B/Rを算出した。その結果、d-ROMs値は平均201.2 ± 67.7 S.D. U.CARR (88.0–370.5) (1 U.CARRは0.08 mg H2O2/dLに相当する酸化能)、BAP値は平均1438 ± 514.0 S.D. µM (51–2562) であった。性別を考慮した1回目と2回目の採血時のd-ROMs値とBAP値、B/R値に群間差はなかった。また、繁殖地からの平均総移動距離や平均最大到達距離、平均旅行時間とd-ROMsやBAP、B/Rには、それぞれ相関はなかった。本研究によりウミネコ個体群として、行動記録中のd-ROMsとBAPの平均値が明らかとなった。今後は個体ごとに利用した場所や場所ごとに要した飛翔時間等の情報と個体内のd-ROMs値とBAP値の期間中変化の関係を検証する。


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