| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-093 (Poster presentation)
フクドジョウは冷水性の底生魚で,河川の中流域に生息し,砂礫や岩礫を好むことが報告されている.しかし,本調査でも湖に流入する河川の河口域でも生息が確認され,適した環境があれば流域を限ることなく,広く分布すると考えられる.本種の生息地利用に関する知見は河川が主で,河口域における生態の詳細は分かっていない.そこで,本研究では北海道屈斜路湖の流入河川の河口域にてフクドジョウの食性および生息地利用の調査を行った.
2018年10月に屈斜路湖に流入するオサッペ川,エントコマップ川,シケレベンベツ川(以下,O河川,E河川,S河川)の3本の流入河川の河口域にて複数の調査区を設置し,調査区ごとに,たも網,さで網でフクドジョウの採捕を行った.採捕個体は,標準体長および生殖腺による雌雄判別を行い,採捕地点の水深,流速,岸からの距離,底質などの環境を測定した.食性を知るために採捕個体(最大5尾)の胃内容物を,目レベルで同定し,個体数および内容物全体に占める面積を計測した.また,各調査区において,水生昆虫の調査を行った.
フクドジョウの生息密度はE河川,O河川,S河川の順で高かった.また,オサッペ川では主にユスリカを利用し,エントコマップ川およびシケレベンベツ川ではユスリカ目とトビケラ目を摂餌していることが分かった.一般的にフクドジョウは底生動物を摂餌することが知られており,本研究結果はこれと一致する.
水生昆虫および底質調査からE河川では主要な餌資源であるユスリカ目が多く,フクドジョウが隠れ家として利用可能な小礫や中礫が豊富であったことから,生息密度が高かったと推察される.対して巨礫が多かったS河川では,ユスリカ目が少なく,フクドジョウを捕食するハナカジカが多数生息していたため,フクドジョウの生息密度が低かったと考えられる.