| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-095  (Poster presentation)

GPSバイオロギングに基づいたコウモリの大規模採餌行動戦略の検討
Investigation of the strategy to forage in the large-scale space by the echolocating bats based on the GPS bio-logging

*藤岡慧明(同志社大学), 中井元貴(同志社大学), 福井大(東京大学), 依田憲(名古屋大学), 飛龍志津子(同志社大学)
*Emyo FUJIOKA(Doshisha University), Genki NAKAI(Doshisha University), Dai FUKUI(The University of Tokyo), Ken YODA(Nagoya University), Shizuko HIRYU(Doshisha University)

コウモリはエコーロケーション(反響定位)能力を駆使して獲物捕食のための正確なナビゲーションを実現している.このような数m程度の小規模空間での行動の一方で,数100 mから数kmの大規模空間におけるナビゲーション行動の実態はほとんど分かっていない.本研究では,大規模空間で行われるコウモリの採餌行動時におけるエコーロケーションと飛行の戦略を明らかにするために,GPSデータロガーと,特注で開発したGPS音響イベントデータロガーを,キクガシラコウモリに搭載して行動の計測を一晩行った.その結果,移動の途中に停滞を繰り返し行っており,停滞時には移動時よりも多くのソナー音声の放射が観測された.キクガシラコウモリは木の枝等にぶら下がりながら周囲の獲物を探索すると報告されていることから,彼らは大規模空間にて採餌と移動を繰り返していると考えられる.それぞれの軌道モードにおける環境選好性を調べた結果からは,森林を選好して停滞および移動していることが分かった.さらに,林道に沿って移動する軌道パターンが多く観測された.これよりコウモリは,大規模ナビゲーションのために経路追従戦略を用いている可能性が示唆される.一方で,開けた空間にて採餌を行うコウモリの行動戦略についても調べるために,ヤマコウモリにGPSデータロガーを装着して飛行軌跡の計測を行った.その結果,ヤマコウモリは山麓あるいは河川沿いを移動しながら、途中で一定範囲内を繰り返し飛翔する停滞パターンを見せることが分かった.これらより,両種とも地形情報を巧みに利用してナビゲーションを行いながら,停滞地点にて採餌を行っていると予想される.両種に対する音響GPSイベントロガーによる更なる計測によって,食虫性コウモリの大規模採餌飛行時におけるエコーロケーションと飛行の戦略の解明が期待される.


日本生態学会