| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-121 (Poster presentation)
ススキはAlが植物毒性を示す酸性土壌において優占することが知られている。調査地のススキは、根に約2,000 mg/kg DWと高濃度のAlを蓄積しており、Al耐性を有すると考えられた。これまでの結果から、ススキの根から分離した内生菌Chaetomium cupreumはAl解毒物質であるオースポレインを産生するとともに、根におけるAlの局在部位を変化させ、ススキのAl耐性を増強することが示唆された。化合物の中には植物の防御機構を誘導するものがある一方、オースポレインはタバコなどに植物毒性を示すことが知られている。本研究では、オースポレインによるススキ、イネおよびレタス実生への植物毒性およびススキの根におけるAl局在部位への影響を考察した。0、62.5、125、250 mg/Lのオースポレイン溶液にススキ、イネおよびレタス実生の根を10日間浸し根長、地上部および根の新鮮重量および乾燥重量を測定した。62.5 mg/L以上の濃度においてススキの根の伸長が阻害され、さらに250 mg/Lでは根の乾燥重量が減少した。また、イネはオースポレインの濃度が高くなるにつれ、地上部および根の新鮮重量が増加した。一方、レタスではオースポレインの濃度が高くなると、根長、地上部および根の新鮮重量が著しく減少した。以上から、オースポレインはススキおよびイネに対しては弱い毒性あるいは成長促進を示し、レタスに対しては強い毒性を示したと考えられた。オースポレインによるススキの根におけるAl局在部位への影響を確認するため、0、10あるいは125 mg/Lのオースポレイン溶液にススキ実生の根を浸漬後、Alを含む水耕液で栽培した。その後Alの局在部位を観察したが、Alの局在部位に顕著な相違は観察されなかった。このことから、C. cupreumによるAlの局在部位の変化は、菌糸の侵入などの物理的刺激による可能性が推察された。