| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-123 (Poster presentation)
地球観測衛星による植生リモートセンシングは,地域スケールから全球スケールに至るまで,生態系の機能と構造の時空間変動を観測する上で有効かつ強力な手法である。これまで,多くの研究では,衛星により観測された林冠の反射スペクトルを利用して群落の葉群構造や個葉レベルの生理的な特性を把握し,それらからモデルによって群落の生産量を推定する試みが行われてきた。近年では,より光合成活性と密接に関連したリモートセンシング指標として,太陽光の下で植物が光合成過程で発するクロロフィル蛍光,すなわち太陽光励起クロロフィル蛍光(Solar-induced chlorophyll fluorescence, SIF)を利用した研究が増えつつある。SIFは,フラウンホーファー線(太陽光スペクトルの暗線)を利用して導出されることから,高精度かつ高波長分解能での光学観測が必要である。日本の温室効果ガス観測技術衛星GOSAT(愛称『いぶき』,2009年打ち上げ)に搭載されたセンサーTANSO-FTSは,メインミッションである大気中の二酸化炭素及びメタン濃度観測を目的に,地上からの反射光を高精度・高波長分解能で観測しており,その観測値からSIFの導出が可能である。その後継機となるGOSAT-2(2018年10月29日打ち上げ)においては,SIFは新たな標準プロダクトとして公開されることが予定されている。本研究では,日本国内を対象として,2009年から2018年にかけてGOSATにより観測されたSIFの季節変動を解析した。その結果,SIFの値は,落葉広葉樹林や常緑針葉樹林,農耕地など,優占する植生タイプの葉群フェノロジー,あるいは農事暦を反映する季節変動を示した。