| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-124  (Poster presentation)

雪解け時期の違いがミヤマキンバイの地上部ー地下部の形質に及ぼす影響
Snowmelt timing and above and belowground traits of Potentilla matsumurae

*小林真(北大FSC), 工藤岳(北大環境)
*Makoto KOBAYASHI(Hokkaido Univ FSC), Gaku KUDO(Hokkaido Univ Environ Sci)

気候傾度と植物の形質との関係を知ることは、気候変動が植物へ及ぼす長期的な影響を予測する上で有効である。寒冷地域では、冬特有の気候要因が植物の形質に影響を及ぼしているが、地上部に比べて地下部へ及ぼす影響について理解は進んでいない。本研究では、北海道大雪山において、今後予測されている雪解け時期の早まりがミヤマキンバイへ及ぼす影響を予想するため、自然に存在する雪解け時期の傾度に沿って地上部および地下部の形質を調査した。調査の結果、雪解け時期が早い場所では地上部に対する地下部のバイオマスの割合が小さいことが明らかになった。特に、雪解け時期が早い場所では、貯蔵物質の蓄積などを担う粗根ではなく、養水分吸収を担う細根への投資が増加していた。この結果は、長期的な雪解け時期の早まりに対する植物の反応には、細根へのアロケーションの増加が鍵となることを示唆している。今後は、雪解け時期の傾度に沿って見られた地下部の形質の違いが、可塑性もしくは遺伝的な分化のいずれかによるものかを明らかにすることで、ミヤマキンバイの冬の気候変動への応答が、どの程度の時間スケールで起こるのかを予測することが可能となるだろう。


日本生態学会