| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-127 (Poster presentation)
Shorea albidaが優占する熱帯泥炭湿地林では、大径木に樹洞(うろ)が多いことが知られている。成長と防御の間の資源トレードオフから、樹洞発生の許容は成長への優先的な投資を意味し、泥炭湿地という貧栄養条件下で大木に成長することを可能にしていると予想される。泥炭湿地林では、泥炭の分解の程度(利用可能な養分量)によって、養分がやや多い立地の森林タイプ(Type1)、中程度の立地の森林タイプ(Type2)、最も貧栄養な立地の森林タイプ(Type3)が成立する。それぞれの林分構造は異なり、最大樹高はType2 > Type1 > Type3である。同じDBHで比較した時、養分が少ない立地の森林タイプの方が樹洞サイズが大きい(Type2, Type3 > Type1)。養分条件、樹洞サイズ、最大樹高から、それぞれの森林タイプでは異なる樹洞の発達を示すことが予想された。そこで各森林タイプの樹洞木の割合および林分構造との関係を明らかにし、樹洞と関連した樹木の成長特性を考察した。本研究では、サラワク州のマルダム国立公園内の熱帯泥炭湿地林のType1, 2, 3に設置された毎木調査プロットで、DBHと胸高樹洞直径を測定した。Type1は樹洞木の割合は低いが、小径木から大径木まで幅広く樹洞が存在した。Type2の一部は個体密度が低く、樹洞のある大径木も存在したが、樹洞木の割合は最も低かった。Type3と一部のType2は小径木が多く、結果として個体密度が高かった。この両森林タイプでは、小径木で比較的高い樹洞木の割合を示した。また樹洞木が発生する最小個体サイズは、貧栄養な森林タイプでより小さかった。