| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-129  (Poster presentation)

小笠原樹木の乾燥適応戦略に関連した葉肉CO2コンダクタンスとルビスコの種特性
Comparative study of mesophyll CO2 conductance and Rubisco across five tree <div>species  with different drought strategies</div>

*松山秦(京大生態研), 坂田剛(北里大一般教育), 岡義尭(北里大海洋), 鈴木拓也(北里大海洋), 安元剛(北里大海洋), 関川清広(玉川大農), 石田厚(京大生態研)
*Shin MATSUYAMA(CER, Kyoto Univ.), Tsuyoshi SAKATA(Lib. Arts. Kitasato Univ.), Yoshinori OKA(MB, Kitasto Univ.), Takuya SUZUKI(MB, Kitasto Univ.), Ko YASUMOTO(MB, Kitasto Univ.), Seiko SEKIKAWA(Agri, Tamagawa Univ.), Atsushi ISHIDA(CER, Kyoto Univ.)

葉の光合成速度(An)といくつかの葉形質の間にはトレードオフ関係が見いだされてきた(Wright et al. 2004)。一般に,気孔コンダクタンス(gs)の大きい水資源浪費型の種は高Anで葉寿命が短く、一方gsの小さい水資源保持型の種は低Anで葉寿命が長い。gsが小さいと蒸散による水損失が抑制されるだけでなく,光合成によるCO2獲得が制限され,このトレードオフの主因となることはよく知られているが,CO2獲得の主要な制限要因である葉肉コンダクタンス(gm)や光合成酵素ルビスコの種特性ついては,このトレードオフに関与するか検討されてこなかった。また近年,gmが環境に応答して短時間で変化することも報告されているが(Flexas et al. 2007),その適応的な意義は明らかになっていない。本研究の目的は,gmやルビスコの種特性が植物の乾燥適応戦略に果たしている役割を検証する事である。
調査は、小笠原諸島父島の乾性低木林で同所的に生育する葉寿命の異なる五樹種(葉寿命が短い順にテリハハマボウ、ハウチワノキ、ムニンネズミモチ、シマシャリンバイ、シマイスノキ)を対象に行った。五樹種のガス交換とクロロフィル蛍光を3日間(2018/7/31、8/2、8/3)測定し,Angsgmの日変化を観測した。その結果、葉寿命の短い種は,日最大gsと日最大gmが高く、気孔を開口した際に,同時にgmが大きく上昇することがわかった。一方、葉寿命の長い種では、gsgmの日中の上昇が小さく葉緑体周辺のCO2濃度(Cc)は低いが,CO2親和性の高いルビスコをもつことがわかった。乾性低木林で共存する樹種の中で,葉寿命の短い水資源浪費型の種は、gsだけでなくgmも大きくルビスコまでCO2を取り込みやすい種特性を持ち、葉寿命の長い水資源保持型の種は、CO2を取り込みにくいがルビスコのCO2親和性が高い種特性を持つことがわかった。


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