| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-132 (Poster presentation)
C3植物とC4植物は光合成回路が異なり、互いに共存しながらも、より適応した環境では一方が優先する。C3光合成の特徴は低二酸化炭素濃度下および高温下で光合成効率が低下することである。C4光合成は二酸化炭素濃縮回路を持つもので、C3光合成の弱点を補うが、葉肉細胞の半分を二酸化炭素の濃縮に利用しているため、高二酸化炭素濃度下および低温下でメリットが無いこと、葉の光獲得効率が悪いというデメリットが示唆される。
本研究では、ヒユ科C3植物のシロザとC4植物のホソアオゲイトウ(以下ホソアオ)を高温(30℃)または低温(17℃)の2種類の温度環境下において、強光および弱光(67%遮光)の2つの光環境を用意し、それぞれで栽培した個体の葉の光合成特性の違いをガス交換速度を測定することで検討した。
最大光合成速度は強光栽培のホソアオ、強光・高温栽培のシロザが特に高く、弱光栽培のホソアオ、強光・低温栽培のシロザ、弱光栽培のシロザが続いた。初期勾配は強光栽培のシロザが高いが、呼吸速度も高く、弱光下の優位性は殆ど無いように見える。弱光栽培のシロザは弱光下でも優位性を示さなかった。
最大光合成速度の30℃/20℃比は高温栽培のホソアオで176%、シロザで124%、低温栽培ではそれぞれ149%、93%で、ホソアオの温度依存性が高いことと温度順化が起こることが示された。
各環境下で栽培したシロザとホソアオの光合成特性を比較してみたが、弱光栽培のシロザは実際の成長に反して光合成特性の有利性は見当たらなかった。C3植物のシロザの光呼吸による高温下の光合成速度低下よりもC4植物のホソアオの低温下の光合成速度低下の方が大きく、これが光合成回路の問題なのか、ホソアオ固有の問題なのかは検討する必要がある。