| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-133  (Poster presentation)

イヌビワにおける葉齢に伴うケイ素の集積と光合成速度、葉寿命の関係
Relationships among Si accumulation, photosynthetic rate and leaf longevity in Ficus erecta (Moraceae)

*梶野浩史, 北島薫(京都大学)
*Hirofumi KAJINO, Kaoru KITAJIMA(Kyoto Univ.)

植物の葉のケイ素含有量には大きな種間差があり、葉にケイ素を多く集積する種からケイ素をほとんど集積しない種まで存在する。根から吸収されたケイ素は蒸散とともに葉に集積され、落葉まで葉齢に伴いたまり続ける。ケイ素は植物のストレス耐性を向上させる有用元素であるが、ケイ素を集積する種では葉寿命が短いことも報告されている。本研究では葉に集積されるケイ素が葉内の二酸化炭素の拡散を妨げ、結果として光合成速度及び葉寿命を低下させるという仮説を立てた。仮説の検証のために葉にケイ素を集積するクワ科のイヌビワを用いてケイ酸肥料の施肥実験を行い、処理区間での光合成速度及び葉寿命を比較した。
2018年6月にイヌビワの挿し木苗16個体を苗床に植え替え、土壌にケイ酸肥料を与えるケイ素供給群とケイ酸肥料を与えない対照群(各8個体ずつ)に分けた。個体間の土壌はプラスチックの板を30 cmの深さまで埋めて仕切り、ケイ素の流入、流出を防いだ。植え替え以後に展開したすべての葉において一週間単位で展開、生残を記録した。それぞれの個体から葉齢の古い葉及び新しい葉を選び、9月と10月に光合成速度及び葉肉コンダクタンスを測定した。光合成測定を行った葉を含む葉齢の異なる葉をケイ素含有量の測定のために採取した。採取しなかったすべての葉の落葉日を記録し、葉寿命の推定にもちいた。葉のケイ素は高温アルカリ融解したのち、モリブデンブルー法で定量した。
葉のケイ素集積速度はケイ素供給群で高かったが土壌のケイ素可給性の差に比べて葉のケイ素集積速度の差は比較的小さかった。今回は処理区間のケイ素集積速度の違いに加えて、ケイ素の集積と光合成、葉寿命の関係について発表する。また、葉組織内のケイ素の分布も併せて考察する予定である。


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