| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-138 (Poster presentation)
総一次生産量(GPP)は、水界生態系の土台を支える重要な要因である。高速フラッシュ蛍光光度法(Fast Repetition Rate fluorometry, FRRf)は、光化学系IIのパラメータ群から、現場GPPをリアルタイム測定する手法として、海洋学の分野で発展してきた。新型FRR蛍光光度計FastOcean(CTG Ltd.)は、従来のChl-aを対象とした励起波長に加え、ラン藻のアンテナ色素を対象とした530 nmと624 nmの励起波長を新たに採用し、ラン藻を含めたプランクトン群集の光合成活性が測定可能とされている。しかし現状では、淡水湖沼におけるFRRfの運用例は非常に少なく、富栄養湖沼で発生するラン藻優占状況下においても、光合成活性からGPP推定が可能であるかどうかは、明らかでない。
本研究は、淡水湖沼におけるFRRfを用いたGPP測定の手法確立を目的とし、琵琶湖北湖・南湖の計4観測点において、7~10月に、FRRfによるGPP推定値(GPPFRRf)と、明暗ビン法(GPPDO)と13C法(GPP13C)による測定値との比較を行った。各GPPのChl-a濃度あたりの値(PBFRRf、PBDO、PB13C)を比較するため、PBDOとPB13Cについて培養時の光量子量に対する回帰式を求め、これらの回帰式に、FRRf観測で計測した現場光量子量(E)を外挿し、PBFRRfとの差分(PBFRRf-DO、PBFRRf-13C)を求めた。
結果として、ラン藻優占時に有効な励起波長は、450 nmと624 nmの組み合わせであることが分かった。また、PBFRRf-DOおよびPBFRRf-13CとEの相関係数Rは0.78および0.94となった。これらの結果から、FRRfと明暗ビン法、13C法による測定結果の差には、強光阻害や代替的電子伝達反応が強く関係していることが示唆された。