| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-142  (Poster presentation)

北海道根釧地域の38年生トドマツ産地試験地におけるアソシエーション解析
Association genetics of 38-year-old Abies sachalinensis provenance test site in the Konsen district, Hokkaido

*内山憲太郎(森林総合研究所), 種子田春彦(東京大学), 石塚航(北海道立総合研究機構), 津山幾太郎(森林総合研究所), 久本洋子(東京大学), 北村系子(森林総合研究所), 後藤晋(東京大学)
*Kentaro UCHIYAMA(FFPRI), Haruhiko Taneda(University of Tokyo), Wataru Ishizuka(FRI), Ikutaro Tsuyama(FFPRI), Yoko Hisamoto(University of Tokyo), Keiko Kitamura(FFPRI), Susumu Goto(University of Tokyo)

北海道は地域によって積雪深や日射量などに大きな環境幅がある。そのような環境の中に広く分布するトドマツは、地域による形態的変異があることが指摘されている。特に、冬期に多雪となる日本海〜オホーツク海側中部以北とその内陸、寡雪・乾燥環境となる太平洋〜オホーツク海側中部以南の環境条件の違いは、本種の形態的変異の創出に大きく寄与していることが予想される。しかしながら、それらの形態変異の遺伝的基盤は未解明である。本研究では、トドマツの環境適応に関わる形質の遺伝的基盤を明らかにすることを目的とし、全道のトドマツが集植されている産地試験地を対象に、形質データの測定を行い、DNA情報とのゲノムワイド関連解析を行った。対象は1978年に北海道の5つの地域の精英樹由来の種子によって造成された厚岸産地試験地とし、解析対象個体数は122、測定形質は、成長、材質、枝葉の形態などに関わる全23形質とした。DNA解析には、事前にゲノム情報を必要としない制限酵素断片配列の網羅的解析の一つであるDouble Digest RAD-seqを用いた。シーケンスにはIllumina社のHiseq2500を用い、de novoアセンブリとSNP call、各種フィルタリングによって得られた5186 SNPを解析に用いた。形質データとのアソシエーション解析には、分集団構造と血縁構造を組み込んだ混合線形モデルを用いた。解析の結果、成長、材質、形態に関わる12の形質において1〜4座の有意な相関を示すSNPが検出された。今回測定した形質の中には、原産地において高いパフォーマンスを示すホームサイトアドバンテージが認められる形質や、厚岸と原産地との間の各種環境距離によってその変異がよく説明される形質等もあり、トドマツの環境適応を理解する上で重要な情報と考えられる。


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