| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-145  (Poster presentation)

モウソウチクの耐風性の解明および耐風性が分布域拡大へ関与する可能性の検討
Evaluation of bamboo stands strength to strong wind and the strength to involve with bamboos' invasion to neighbor forest stand.

*鈴木覚, 萩野裕章, 野口宏典, 南光一樹(森林総合研究所)
*Satoru SUZUKI, Hiroaki Hagino, Hironori Noguchi, Kazuki Nanko(FFPRI)

モウソウチク等タケの分布域が拡大している。拡大の最前線では、放置されたモウソウチク等が隣接地へ侵入しており、侵入された場所では、樹木が枯死するなど様々に影響を受けている。本研究ではモウソウチクの耐風性能を、限界回転モーメントや風力係数として定量的に評価し、樹木と耐風性を比較、検討をおこなった。限界回転モーメントを定量化するため、引き倒し試験を行った。引き倒し試験において、牽引力を測定しながらモウソウチクが倒伏するまで牽引し、ピーク力から限界回転モーメントを計算した。風力係数は風洞装置内にモウソウチクの一部を固定し、風を与えたときに試料に作用する荷重を測定して定量化した。引き倒し試験の結果、稈重量に対する限界回転モーメントの比が、比較したすべての樹木より大きかった。このことから、重量ベースで見た場合、モウソウチクは樹木よりも根系の強度が高いことがわかった。また、風力係数はほとんどの樹木より小さく、風があたったとしても、個体に作用する力へと変換されにくいことがわかった。このような特異的な耐風性能を示した原因は、モウソウチクの稈が中空で、軽量かつ柔軟であるためと考えられた。さらに、隣接したヒノキ林にモウソウチクが侵入した状況を想定し、モウソウチクの耐風性が分布域拡大の要因となる可能性を検討した。その結果、ヒノキの耐風性の方がモウソウチクより高いと考えられたことから、強風を受けたときに樹木のみが被害を受け、モウソウチクが選択的に残存する状況は考えにくく、モウソウチクの耐風性が隣接した樹林地への侵入に有利に働く可能性は低いと考えられた。


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