| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-149 (Poster presentation)
スギはオゾンに対する耐性が高い樹種として位置付けられる。スギ品種間でオゾンに対する成長応答が異なることが示されたが、そのメカニズムの理解までは至っていない。スギの遺伝的背景は、日本海側を産地とするウラスギ系統、太平洋側を産地とするオモテスギ系統、屋久島を産地とする系統の大きく3つに分類される。本研究では、遺伝的背景が異なるスギ3品種を材料にオゾン付加実験を行い、今回報告する光合成と成長応答に加えて、揮発性有機化合物の生成量や、活性酸素消去系酵素の活性と抗酸化物質の濃度の変化、さらには発現遺伝子の解析を行うことで、オゾン耐性に関与する発現遺伝子を検出し、スギのオゾン耐性機構を解明することを目的としている。茨城県つくば市の森林総合研究所の苗畑に設置した開放型オゾン暴露施設内に、コンテナで1年間育苗したスギ挿し木苗を植栽し、オゾン付加処理を2生育期間行った。材料には、ウラスギ系統(新潟県産;ドンデン562)、オモテスギ系統(静岡県産;河津4)、屋久島を産地とするスギ(屋久島4)の3クローンを用いた。オゾン処理は通常大気の2倍に設定した。各処理6チャンバー内に、各品種3から4個体ずつ生育させた。2生育期目に、一年生と当年生のシュートを対象に、7月、8月、11月に光合成機能の測定を行った。処理期間中、樹高と地際直径を測定した。2成長期終了後に全て刈り取り、地上部(主軸、一次枝、葉)、地下部のバイオマスを測定した。光飽和時の電子伝達速度は、屋久島4の苗下部のシュートでのみ、オゾン処理により低下する傾向を示した。樹高、地際直径、個体重量にオゾン処理の効果はみられなかった。地下部を含む樹体内バイオマス配分や、シュートの形態的特性に対するオゾン付加の影響の有無について検討を行い、揮発性有機化合物の生成量の変化等との関連を考察する。