| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-150 (Poster presentation)
葉機能形質の種内変異は多くの研究で報告されているが、その植物のパフォーマンスや生態系機能への貢献の理解は不充分である。我々は亜高山帯針葉樹林と落葉広葉樹林における優占種の葉形質、生産力、資源利用効率を調べた。3つの仮説を立てた:1)葉形質の標高間変異は葉経済スペクトラム(leaf economics spectrum、LES)に沿って変化し、それぞれの標高での生産力や資源利用効率の改善に貢献する。2)葉形質変異はLESには沿っていないが生産力や資源利用効率の改善に貢献する。3)葉形質変異は環境ストレスの負の影響の結果であり、生産力も資源利用効率も標高上昇ともに低下する。解析の結果、落葉広葉樹ブナでは葉面積あたり葉重(leaf mass per area、LMA)と窒素含量が標高とともに増加し、純同化速度(葉面積あたり生産速度)、葉窒素生産性(葉窒素あたり生産速度)が標高とともに増加し、生育期間の短さを補っていると考えられた。常緑針葉樹オオシラビソではLMAも葉寿命も高標高で低下し、生産力も資源利用効率も高標高で低下した。ブナでは仮説2が、オオシラビソでは仮説3が当てはまると考えられた。葉形質の標高依存性とその生態学的意義は種によって異なると考えられる。