| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-162 (Poster presentation)
地球温暖化による生育適地の減少や人為改変による生育地の劣化などが懸念されている今、遺伝資源の生育域外保存の必要性が高まっている。生育域外で樹木を保存する際、成体のまま保存するのは広大なスペースと膨大な維持管理コストが必要であるが、種子の形で保存すれば限られたスペースに多様な遺伝資源を長期的に保存することができる。ただし、種子には長期保存に向くものと向かないものがあるため、その簡易的な判別法はコスト削減の点から重要である。長期保存への向き不向きに関与する性質の一つとして、乾燥耐性がある。種子は乾燥することで菌害による死亡のリスクも減り長期保存が可能となるが、乾燥耐性のない種子(リカルシトラント種子)は乾燥により死亡してしまう。そこで、本研究では乾燥耐性の有無を種子形質から推定した先行研究(Daws et al. 2006 Ann Bot)を参考に、日本産樹木1100種の1割弱にあたる93樹種について種子形質としてSCR (胚珠に対する種皮の割合) と胚珠重を測定した。そのうえで、先行研究の海外産種子の形質を用いた乾燥耐性推定モデルが日本産樹木種子にもあてはまるのかを検証した。その結果、93種の種子のSCRと胚珠重は先行研究と同程度の範囲にあり、多くの樹種で種子の乾燥耐性が種子形質から正しく推定された。一方で、リカルシトラント種子をつくるホルトノキやイヌマキといった種が先行研究のモデルでは乾燥耐性のある種と判定された結果もみられ、日本産樹木種子に即したモデルの改善が必要であることが示唆された。