| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-167  (Poster presentation)

同所的に生育する近縁植物2種の生殖隔離と繁殖干渉
Reproductive isolation and interference between closely related plants in sympatry.

*堂囿いくみ(学芸大・院・環境科学), 荻嶋美帆(東北大・院・生命科学), 堀江佐知子(東北大・院・生命科学), 山城考(徳島大・院・SAS研究), 山田孝幸(東北大学・植物園), 牧雅之(東北大学・植物園)
*Ikumi DOHZONO(Tokyo Gakugei University), Miho Ogishima(Tohoku University), Sachiko Horie(Tohoku University), Takashi Yamashiro(Tokushima University), Takayuki Yamada(Botanical gardens Tohoku Univ.), Masayuki Maki(Botanical gardens Tohoku Univ.)

近縁植物2種が同所的に分布するとき,2種間に不適応な雑種が形成されることがあり,同所的集団では交雑が起こりにくい形質が分化すると予想される。イヌヤマハッカ(シソ科ヤマハッカ属)と近縁種セキヤノアキチョウジは,両種ともにトラマルハナバチに送粉されており,同所的集団では種間で開花ピークが異なり,異種花粉の干渉を避けていることがわかっている。イヌヤマハッカと同属のクロバナヒキオコシも同所的に生育することが観察されており,2種間の生殖隔離と繁殖干渉について明らかにすることを目的とした。2017-2018年に長野県奥志賀地域の単独集団4ヶ所,同所的集団3ヶ所にて調査を行った。(1)2種間で人工的に異種交配をしたところ,2種ともに雑種種子が形成されたが,種子生産量は同種交配より低かった。(2)開花フェノロジーと訪花昆虫相・訪花頻度を測定したところ,同所的集団の2種間の開花ピークはほぼ同じだったが,2種の主な送粉昆虫種は異なっていた。同所的な雑魚川集団のみミヤママルハナバチが2種へ訪花していた。訪花頻度は,集団間および年によって異なっていた。(3)自然受粉の種子生産について,イヌヤマハッカとクロバナヒキオコシ共に,同所的集団の方が単独集団よりも種子生産が低かった。以上の結果から,同所的集団では開花ピークの違いはみられないが,送粉昆虫種が異なることで生殖前隔離があると考えられる。自然受粉の種子生産は,送粉者の訪花頻度に依存していると考えられるが,2種に共通の送粉者がいるときは,繁殖干渉が生じて種子生産が低くなると考えられる。2種間の繁殖干渉については,混合花粉受粉実験の結果を含めて議論する。


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