| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-184 (Poster presentation)
ゲーム理論は協力(利他)行動の進化メカニズムを解明するために精力的に研究されてきた。特に2×2(2人プレーヤー:2戦略)の利得表で規定されるペアワイズゲームは広く扱われており、その中でも着目すべきは協力行動の促進を妨げる社会ジレンマの存在である。社会ジレンマは囚人のジレンマに代表されるように、協力の推進を妨げる重要な要素であり、“ジレンマに直面したとき、人間を含む様々な生物はどのようにしてジレンマの状況から脱し、互恵関係を確立するのか”は、多分野に跨るゲーム理論研究における重要な争点である。2006年にM. Nowakは、過去数十年間に報告された多数の協力促進メカニズムが理論的に5つの互恵ルールに統合できることを示した。その後、協力行動を阻害するジレンマの種類は理論的に2つに大別できることが分かった。これらは、“相手を搾取しようとするジレンマ”を意味する「ギャンブル志向型ジレンマ(Gamble-intending dilemma: GID)」および、“相手に搾取されまいとするジレンマ”である「リスク回避型ジレンマ(Risk-averting dilemma: RAD)」と呼ばれ、ゲームを規定する利得表からそれぞれの強度が導かれる。本研究では、ペアワイズゲームにおけるRAD – GID位相平面図を描くことで、これら5つの互恵ルールがどのようなジレンマ緩和機構を有しているかを視覚的に捉えた。また、5つ互恵ルールがそれぞれどのようなゲーム構造の変換(例:囚人のジレンマ型ゲームが、RADの緩和により、チキン型ゲームに変換される)を起こすかを示した。実際にジレンマの緩和スタイルは5つのルールで各々異なることがRAD – GID位相平面図からも確認できることに加え、協力行動の促進にどのように貢献しているかを視覚的に捉えることに成功した。