| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-207 (Poster presentation)
ササ類などの下層植生が高木性樹種の実生更新を阻害することが知られており、広葉樹林の更新では下層植生の除去管理がしばしば検討される。しかし、このような下層植生管理が土壌生態系に及ぼす影響はよくわかっていない。本研究では、島根県三瓶山麓の落葉広葉樹二次林にて下層植生除去を5年間行った立地にて、土壌動物および土壌微生物の調査を行った。島根大学三瓶演習林内の落葉広葉樹二次林にて、斜面中腹および下部に5×5mの調査区を設置し、2012年に下層のササを刈払い、隣接する場所に対照区を設けた。刈り払いは5年間継続した。5年後に表層土壌を採取し、リン脂質脂肪酸(PLFA)の分析および中型土壌動物の個体数の計測を行った。下層植生除去により、土壌にはリター堆積の減少、土壌容積重の増加、地温の上昇が認められた。土壌微生物は、細菌PLFAと菌類PLFAのいずれも大きく減少していた。また、菌類/細菌PLFA比が減少しており、微生物相の変化が認められた。土壌動物の個体数は、下層植生除去区で大きく増加しており、特にトビムシ類の増加が顕著だった。対照区で認められたトゲダニ亜目やクモ目などの捕食性土壌動物は、下層植生除去区では確認できず、高次の栄養段階が欠落していた可能性がある。下層植生の除去によりリターの流出が生じ、微生物相の変化や土壌動物ハビタット構造が変化したことが要因として考えられる。これらの結果は、下層植生の除去管理により、土壌微生物バイオマスの低下や土壌節足動物の群集構造の単純化が生じることを示しており、有機物分解や物質循環といった土壌生態系の機能が変化する可能性を示唆している。