| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-209 (Poster presentation)
【背景・目的】
北海道は交配用セイヨウミツバチの重要な育成地となっており、毎年夏季には本州以南の多くの養蜂家が転飼先として北海道を訪れる。しかし、8月には自生の花資源が急速に減少するため、ミツバチが花蜜・花粉を求めて水田に飛来し、その結果、農薬に曝露することが蜂群数減少の一要因になっているとされている。そこで、外来植物群落である寒地型牧草地等を有効活用し、ミツバチの安定生産を図るため、1)既存のマメ科牧草を当該時期に開花させる植生管理手法、2)比較的短期間で開花し、訪花昆虫の誘引効果が高い菜の花類の簡易導入、3)自生草本植物の当該時期における花資源としての利用可能性、を検討した。
【材料・方法】
1)札幌市内の寒地型牧草地において、化成肥料・熔燐施用の有無および刈取り時期(5、6、7月、刈取りなし)を要因とする植生管理試験を3年間継続し、8月におけるシロツメクサ等マメ科牧草の頭花数に及ぼす効果を検討した。
2)和寒町東山スキー場の斜面(現況牧草地)に刈取り・除草剤散布区、刈取り区、除草剤散布区を設置し、牧草の地上部を除去後、苦土石灰、熔燐とともに、シロカラシあるいはハナナの種子を散播(6月)、本葉展開時に施肥後、8月にシロカラシ、ハナナの個体数・草丈を調査した。
3)北海道に自生し、8月の花資源としての利用が望める草本植物をポット栽培し、生育状況・ミツバチ訪花状況を調査した。
【結果・結論】
1)シロツメクサの頭花数は、初年度・2年目は熔燐施用・5月刈り、3年目は化成肥料・熔燐施用・6月刈りにより、有意に増大した。
2)シロカラシ、ハナナとも8月に開花したが、ともに処理間に有意な差は認められなかった。
3)供試した自生草本植物のうち9種が8月中旬に開花したが、ミツバチの訪花は確認されなかった。
遊休化した寒地型牧草地を花資源確保の場として適切に管理することにより、北海道の農村地域における生態系サービスの向上が期待される。