| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-215 (Poster presentation)
乾燥は世界中の河川で起こる撹乱であり、気候変動によって発生頻度が増加しつつある。乾燥が生物に与える影響を明らかにすることは、保全等の観点から重要になりつつある。本研究は、生態系エンジニアリング等を通して生物多様性を維持するイシガイ科二枚貝類に着目した。イシガイ類の乾燥耐性を調べて競争種タイワンシジミとの差異を明らかにし、乾燥がどちらを強く減少させるのかを検討した。滋賀県の農業水路で6種のイシガイ類を採捕し、水温25°Cの水槽で1日間保管した。その後、殻長・湿重量を測定し、乾いたバット上に並べて恒温器(25°C、平均湿度71%)に入れて放置した。12時間ごとに生死を確認し、生貝は湿重量を測定した。実験終了後、乾燥標本を作成し、殻の厚みを測定した。また、楕円形指数(殻長/殻高)と1日あたりの水分損失速度(g/day)を算出した。種間で生存時間が異なるかどうかを明らかにするため、log-rank検定を用いた多重比較を行った。生存時間に影響する要因(貝の特徴)を特定するため、Cox回帰直線を用いた単回帰分析を行った。殻長と水分損失速度との関係を明らかにするため、単回帰分析を行った。これらの結果を、同条件で実験したタイワンシジミの先行研究の結果と比較した。イシガイ類の乾燥時の生存時間は種間で異なり、タイワンシジミより長かった種も短かった種もいた。イシガイ類の生存時間は、殻長・体重との間に正の相関があった種、および相関がなかった種がいた。そのため、殻長と生存時間との間に負の相関があるタイワンシジミと異なった。これは、乾燥時にイシガイ類の一部の種は稚貝、タイワンシジミは親貝が死にやすいことを示し、乾燥に対する戦略の違いが示唆された。イシガイ類は殻長が大きい方が水分を速く失い、大きい方が失いにくいタイワンシジミと逆であった。以上の結果から、イシガイ類は殻長が大きくて重たい個体は水分を多く失うが生存時間は長い傾向が示された。