| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-224 (Poster presentation)
生物多様性の保全において,人工林の皆伐による森林生態系への影響は正負の両方の効果が考えられる.正の効果として,皆伐が針葉樹人工林に生息地複雑性をもたらすことにより種多様性の増加,負の効果として,皆伐施業による直接的な破壊や,森林性動物の生息地分断が挙げられる.そこで本研究では,小規模皆伐がヤマネの生息に与える影響を評価した。
2017年冬に1ha未満の小規模皆伐が行われた筑波大学川上演習林の3つの伐開地に隣接するカラマツ林分および対照区において,ヤマネの巣箱利用率と開花・結実状況を調査した.小規模皆伐前後(2017-2018)のヤマネの巣箱利用率を,皆伐隣接区4地点,対照区4地点で比較した.また,林縁からの距離がヤマネの生息確率に与える影響を調べるため,3つの皆伐隣接区において,2か所の林縁から0m,40m,80m離れた場所に調査地点を設置し,巣箱利用率を調べた(計18地点).各調査地点の中心に10m×10mの調査プロットを設置し,開花・結実している低木・亜高木の種を同定,数とともに記録した. 開花・結実した低木・亜高木は数・種数ともに林縁部の方が多かった. 林縁部は光が差し込みやすく,植物の成長を促進したと考えられる。皆伐前後のヤマネに関する比較では,皆伐後のヤマネの巣箱利用率が減少していた.皆伐1年目は皆伐施業による直接的な破壊の影響が大きく,個体数が減少したと考えられた.