| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-233  (Poster presentation)

都市近郊の里山環境の公園利用が創出する生物多様性とその要因
Factors maintaining biodiversity under the nature-oriented park use of satoyama ecosystems in urbanized landscapes

*岩知道優樹(横浜国立大学), 内田圭(横浜国立大学), 丑丸敦史(神戸大学), 横田樹広(東京都市大学), 佐々木雄大(横浜国立大学)
*Iwachido YuKi(Yokohama National University), Kei Uchida(Yokohama National University), Atushi Ushimaru(Kobe University), Shigehiro Yokota(Tokyo City University), Takehiro Sasaki(Yokohama National University)

人間活動は多くの生物多様性を減少させてきたが、畑や牧草地などの二次的自然ではむしろ生物多様性を増加させてきた側面もある。日本における二次的自然の代表の1つである里山では、伝統的な農業活動により生物多様性が維持されてきた。しかし、急激な都市化や農業集約化により多くの里山生態系は消失した。近年では、現存する数少ない里山生態系においても、人口減少や高齢化に伴う農業従事者の減少により放棄が進行している。特に、都市近郊の里山環境の放棄は、これまで都市住民が享受してきた里山生態系からの恩恵が享受できなくなる可能性が高い。以上より、残存する都市近郊の里山生態系の放棄に対応することが急務である。しかし、将来の人口動態などを考慮すると、伝統的農業活動の再導入は必ずしも現実的ではない。
本研究では、里山生態系の生物多様性が維持可能な代替利用の1つとして、大規模な土地改変を伴わず、元の里山環境を活かした、自然立地的な公園利用に焦点を当てた。公園利用の管理は、これまで里山で実施されてきた農作物や燃料・材木を得る目的ではなく、公園内の安全や景観を維持する目的で行われている。
神奈川県東部の残存する里山環境を対象に、3つの異なる利用様式(農業利用、公園利用、放棄地)間のα・β多様性、種組成の違いとその要因を検証することを目的に、全14サイトで2017年の初夏・秋、2018年の春・秋に植物とチョウ類、環境要因(土壌水分、開空率、植生高、傾斜)の調査を行った。また、航空写真を用いて周辺の土地利用面積(農地、森林、都市域など)や管理団体へのヒアリングなどから管理頻度(草刈り)を算出した。結果、公園利用における適度な管理を実施することで、里山生態系の生物多様性が保全される可能性を示した。しかし、分類群により多様性保全の可能性が異なるので、公園利用における保全対策を構築することが求められる。


日本生態学会