| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-234 (Poster presentation)
オスのニホンジカはメスよりも分散距離が長いため、分布拡大の前線や強い捕獲圧がかかった低密度地域の性比がオスに偏ることが知られている。低密度下の性比の偏りは、配偶相手との遭遇率の低さを介して増加率の低い状態、遅滞相を生じる。遅滞相の把握は個体群管理における計画立案や効果検証に重要であるが、低密度地域では捕獲数が少なく性比の推定が難しいことがある。目撃情報はニホンジカの分布前線を把握するのに使用されてきたが、狩猟者が性器や角を確認した性別と比べ、目撃情報の性別には誤同定が多い可能性がある。特に、角のない時期があることや、視界の悪さによる見落しによって、オスをメスと間違える可能性がある。目撃情報におけるオスの同定率を推定できれば、捕獲と目撃というふたつの情報源を使って、低密度地域であってもより正確な性比を知ることができるだろう。そこで本研究は、「シカ情報マップ」の目撃記録が多い愛知県において、目撃情報のオスの誤同定の有無を評価し、捕獲と目撃の記録からオスの同定率を加味して性比を推定した。2014年10月から2018年3月31日までのデータを狩猟メッシュ単位で集計し解析した。調査期間内の全データから、メッシュ別性比(オスの数/(オスの数+メスの数))を計算すると、捕獲と目撃の性比には弱い正の相関があった。性別が記録された個体数がともに10以上のメッシュに限ると、より強い正の相関が得られた。個体数10以上のメッシュにおいて、捕獲の性比よりも目撃の性比がメスに偏ったメッシュが過半数を超えたため、目撃の性比は捕獲のものよりもメスに偏っていることがわかった。オスの同定率を推定するモデルを提案し、オスの同定率を考慮した性比を推定した。