| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-239 (Poster presentation)
市民科学は生物種の広域的な分布パターンと、その時空間の変化を把握する研究手法として有効なアプローチの一つである。市民科学の手法を用いたモニタリングは先進国において多くの成功事例が蓄積されており、本アプローチを途上国の沿岸域モニタリングへと活用することにより、沿岸生態系の保全再生の基盤となる科学的知見の蓄積が期待される。そこで、本研究では急速な経済発展や気候変動による様々な環境問題に直面しているインドネシア沿岸域を対象として、地元漁民との協働によるモニタリングシステムの構築を目的とする。
本研究では、2018年3月にジャカルタ近郊の3漁村を訪問し、漁民とモニタリング項目について議論した。そして、漁民が写真をアップロードし、その結果を閲覧可能なスマホアプリを開発した。次に、同年7月にジャカルタにおいて、3地域の漁民と一緒にスマホアプリによる沿岸域モニタリングを実演するワークショップを実施した。最後に、同年12月にインドラマユの漁民と協働でスマホアプリを用いたモニタリングを試行した。
2018年3月の調査によって、1)水質、2)赤潮、3)漁獲量、4)IUU、5)ゴミの5つをモニタリング項目として同定し、これら5項目をスマホから報告するアプリ(FishGIS)を開発した。同年7月のワークショップによって、漁民の所有するスマホが最新のOSではないため、アプリが正常に動作しないことが判明した。そこで、古いバージョンのOSでも正常に動作するようにアプリを修正した。同年12月に実施した沿岸域モニタリングの試行によって、修正したアプリが現地で動作することを確認すると同時に、漁民との協働によりモニタリングの実施マニュアルを作成した。
本研究により、インドネシアにおいて漁民との協働による沿岸域モニタリングを支援するスマホアプリを構築した。今後、モニタリング実施体制の構築および、関係者の役割分担の明確化が課題である。