| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-240 (Poster presentation)
地域毎に行われる自然環境調査はインベントリー作成による地域環境の把握の為に重要だが、従事する人材の問題、調査時の環境、タイミングによる不正確さの問題がある。それらの補完として、近年一般化しつつある環境DNA分析を用いることは、証拠の蓄積として有効といえる。
神奈川県茅ヶ崎市市内を流れる相模川水系の一級河川小出川の中下流域において、2018年1月12日に約2kmに渡り鳥類の目視調査を行い、同時に河川水を採水し環境DNA分析を行った。
目視調査は調査参加者の簡便性から橋梁毎に調査区を分け、上流から下流に向けて踏査し、水域、陸域、上空を合わせ全体で34種の鳥類が確認された。水鳥はカモ科のヒドリガモ、マガモ、カルガモ、コガモ、ウ科のカワウ、サギ科のアオサギ、ダイサギ、コサギ、クイナ科のバン、オオバンが確認された。合わせて環境DNA分析の為、約1km間隔に3地点で河川水1Lの採水を行った。採水後、10%塩化ベンザルコニウム溶液を1ml添加し常温で持ち帰り、ステリベクス(0.22μm)フィルターで濾過後、冷凍保存した。環境DNA分析は業者に依頼し、mtDNA-COI領域を対象とし、次世代シーケンサーを用いた網羅的解析を行った。
環境DNA分析の結果、手法や種レベルの識別について検討課題はあるものの、目視調査で確認数の多いカモ類や、バン、オオバンは全域で検出された。全体で1-2個体のみ確認したアオサギやダイサギは検出されず、各区間で1-4個体確認したコサギは1地点で検出された。カワウは各区間で1-2個体確認され、1地点で検出された。陸域を生息域とする鳥類はハシブトガラスのみ1地点で検出された。
河川における調査では水量や流速等の環境要因があり、生息する鳥類も常に移動している。生息密度が低い種については複数の地点設置や手法の検討が必要と考えられる。
既存の指摘を含め、地域における自然環境調査、環境DNA分析手法や、地域で行われる環境研究への適用について議論を深めたい。