| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-244 (Poster presentation)
多様な生物は生物群集を形成することで生態系機能を担っている。群集形成に働く種間相互作用(捕食・草食や競争、ファシリテーションなど)の相対的重要性が環境ストレスによって決まることを提唱した2つの仮説がある。「環境ストレス仮説」では、低ストレス環境では採食者の個体数や活動が高く維持されるため、高い採食圧が生物(被食者)の群集構造を左右する。中程度のストレス環境では採食者の数や活動が抑えられ、生物の成長や繁殖が盛んに行われるために種間競争が重要となる。高ストレス環境ではストレスそのものが群集の構成種を強く制限している。また、「ストレス勾配仮説」によれば、低ストレス環境では、採食圧が高くなるため、採食者に対する防衛戦略(トゲなど)を持つ生物の近傍で生育する他の生物が採食圧から免れるというファシリテーションが群集形成に重要な種間相互作用となる。同様に、乾燥や高温などの物理ストレスの高い環境においても、ストレス耐性の高い生物が低い生物の生育環境や資源制限を改善するというファシリテーションが重要な種間相互作用として働く。他方、中程度のストレス環境では、生物は過度の採食圧や物理ストレスから解放されるため、種間競争が群集形成に強い影響力を持つ。これらの2仮説は、環境ストレスとファシリテーションが生物群集の形成過程の制御を通じて生態系機能を左右している可能性を示唆している。しかし、これまでに生物多様性-生態系機能の関係を調べた研究分野では種間競争の影響への注目が高く、環境ストレスやファシリテーションの影響の解明は進んでいない。本研究では、種間競争とファシリテーションを組み込んだ多種系相互作用モデルを構築・解析し、環境ストレスの大きさによって生物多様性-生態系機能関係の傾き(ゆるやか/閾値的な応答)やメカニズム(選択効果や相補性効果の相対的重要性)がどう変化するのかを探る。