| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-247 (Poster presentation)
多様な生態系サービスを持続的に利用・管理していく上で、同所的に供給されるサービスの組み合わせ(バンドル)や多面性を把握し、その生成過程を理解することは重要な課題のひとつである。近年の研究により、炭素固定や栄養塩循環など生物の役割が明瞭な、ごく一部の生態系機能・サービスでは、その多面性に生物多様性が重要な役割を担っていることが実証されてきた。
一方、大半の生態系サービスでは、その供給過程における生物の働きが十分理解されておらず、それらを対象とした群集生態学的な研究も少ない。最近、発表者らは様々な生態系サービスに不可欠な樹木の有用性と樹木種の系統・形質を介した非ランダムなリンクを実証した。本発表ではその成果を活用し、生物が生態系サービスの供給パターン生成に果たす役割に関する2つの仮説、①同種から供給されやすいサービス・されにくいサービスは群集レベルにおいてもそれぞれ同所的に供給されやすい・されにくい、②生態系サービス多面性は生物多様性とともに増加する、を検証する。
自然環境保全基礎調査データのうち条件を満たす温帯林の1086群集159種を対象に、15種類の生態系サービスの供給パターンとの関係を解析した。同種・同所からの供給されやすさはκ統計量により評価した。また、種・系統・形質の3つの多様性と生態系サービス多面性の関係を勾配ブースティング法で検証した。
群集レベルにおけるサービスの同所的な供給されやすさのおよそ5割が種レベルの傾向で説明された。一方でこの比率はランダムな群集集合から予測される値より大幅に低く、群集集合過程もまた重要であることが示唆された。また、生態系サービス多面性と形質多様性の間に強い正の相関が見られた。さらに当日は、種組成の空間パターンと生態系サービス供給の空間パターンの対応についても紹介したい。