| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-249 (Poster presentation)
都市人口が世界的に増加する中、都市においても生物多様性の確保が課題となっている。都市内の樹林地、草地、水辺地等の緑地は、都市住民にとって身近な自然とのふれあいの場であるとともに、生物の生息場所としても貴重な空間である。わが国の都市では、人口減少・少子高齢社会に対応した都市のコンパクト化の動きの中で、新たに発生した空き地の緑地化や既設公園の集約・再編など緑地空間が大きく変容する可能性があるが、その際に都市の生物多様性の確保に結び付く緑地の保全・創出を推進するには、どの程度の規模で、どういった構造の緑地が、どのように配置されれば生物多様性保全に寄与し得るかといった知見を整理し、緑地計画に活用することが有効と考えられる。
そこで本研究では、東京都内の都市化の程度の異なる範囲において、緑地の量、質、配置が生物多様性にどのように影響するか明らかにするため、生物種の出現傾向と環境要因との関係を分析した。対象地は東京23区内から多摩地域にかけて位置する様々な規模(0.1〜10ha以上)の61公園とし、生物データはこれら公園において2013~2014年に調査した鳥類(樹林性・水辺性)、飛翔性昆虫類(トンボ類・チョウ類・バッタ類)及び地上徘徊性昆虫類の各種の出現有無の記録を用いた。環境データは、緑地の量については公園内の緑地面積等を、質については公園内の植物種数やビオトープ、サンクチュアリの有無等を、配置については公園周辺の一定範囲に存在する緑地の面積や連結性指標値等を用いた。
分析の結果、分類群による多少の出現傾向の違いは見られたものの、概ね、公園内の緑地の面積が大きく、その構成要素として多様な植物種やビオトープ等が存在し、周辺の緑地との連結性が高い公園ほど、種多様性が高い傾向があった。本発表では、これらの分析結果を紹介するとともに、結果を踏まえた都市緑地の保全・創出・管理の方向性について論ずる。