| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-254 (Poster presentation)
無融合性複合体はその成立過程に倍数性と雑種形成を伴うため、複雑な形質変異を示すことが知られている。タンポポ属Taraxacumの二倍体は有性生殖を、倍数体は無融合種子形成を行い、倍数体が条件的アポミクトや花粉供与として種形成に絡むため、変異の大きい無融合性複合体が形成される。タンポポ属の無融合性複合体として淡黄色の頭花を有するキビシロタンポポ、およびヤマザトタンポポと称される分類群がある。前者は瀬戸内、後者は日本海側を中心に主には中国地方に分布するといわれ、これまで頭花の大きさと花色の濃淡で区別されてきたが、その形態的な識別点は明確ではない。また、四国や九州からも淡黄色型タンポポの産地報告や、中国山地ではどちらとも見分けのつかない形態もあり、本研究では上記2群の実態を明らかにし、イガウスギタンポポやオクウスギタンポポを含めて、日本固有の淡黄色型タンポポとの関係性を論じることを目的とした。
キビシロ・ヤマザト群では四倍体も五倍体も同じように分布し、イガウスギは五倍体、オクウスギは四倍体であることが確認できた。しかし、その倍数体レベルと花色には対応がなく、また、同一条件下での栽培個体の花色変異を調査した結果、開花期で花色は大きく変化せず、特にCMYK変換によるY値が20以下の個体は、同一個体の頭花ごとの変異も小さかった。一方、Y値が50以上の個体は、頭花ごとに花色が異なるものもあり(最大Y値差は約50)、なかには同じ頭花でY値が30も下がり、咲きはじめから色が薄くなる頭花が多かった。しかし、タンポポの主な分類形質である総苞片を含む頭花の形態は連続的だった。また、葉緑体ゲノムは在来の二倍体種で大きく変異し、キビシロ・ヤマザト、イガウスギはその変異の大きい在来系と、変異の小さい大陸・台湾系を合わせ持つが、オクウスギは大陸・台湾系のみで、異なる起源の可能性がある。