| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-255  (Poster presentation)

日本産短日性ウキクサにおける限界日長変化に伴う概日時計周期の変化
The local adaptation of critical day-length involves the modulation of circadian periods in Japanese short-day duckweeds

*村中智明(京都大学 生態研), 小山時隆(京都大学 理学), 工藤洋(京都大学 生態研)
*Tomoaki MURANAKA(CER Kyoto Univ.), Tokitaka Oyama(Dept. Sci. Kyoto Univ.), Hiroshi Kudoh(CER Kyoto Univ.)

生物は時間を計る能力をもつ。このことを人類が認識したのは、農作物の中に日長を感知して花をつける種類が発見された時であった(Garner & Allard 1920)。この日長測定の基盤となるのが、概日時計が生成する1日周期のリズムである。このリズムは定常条件においても自律的に持続する。定常条件でのリズム周期は遺伝的に決まるが、シロイヌナズナではリズム周期に大きな自然多型(22~29 時間)が報告されている(Michael et al. 2003)。このことは、概日リズムの周期が多様化する要因が存在することを示唆している。
我々は概日時計が光周性花成の基盤であることに着目し、日本産アオウキクサ(Lemna aequinoctialis)を材料に周期多様化の解析を進めている。アオウキクサは日本全土の水田に生息し、1週間の日長処理で花芽が確認できるため、花成限界日長の地域適応の解析に最適な材料である。すでにYukawa & Takimoto (1976)により限界日長に緯度依存性が報告されている。さらに、概日リズムの測定においても、ジーンガンによる一過的な発光レポーター導入と光電子増倍管による自動測定を組み合わせることで多検体でのリズム解析が可能である。我々は日本全国から約25系統のアオウキクサを収集し、各系統の限界日長と概日時計の周期を調べた。限界日長には12~14時間の多様性がみられたが、緯度依存性は明瞭ではなく、同一水田から採取したアオウキクサにおいても多様性がみられた。一方で、限界日長と概日リズム周期には負の相関がみられた。このことは限界日長の地域適応に、概日時計の周期変化が伴う可能性を示唆している。
現在、北海道と鹿児島からウキクサを複数系統採取し、限界日長の緯度依存性の追試を試みている。また、柔軟な概日時計の周期変化を引き起こす原因を探索するために、RNA-seqによるde novoトランスクリプトーム解析を進めている。これらの結果についても報告したい。


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