| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-257 (Poster presentation)
水生昆虫の種同定システムは、生物種の多さや形態分類の困難さなどから手法が確立していない部分がある。そのため、水生昆虫の生態調査や生物多様性の評価に「環境DNA分析」を使用することができれば、それらを評価する上で環境DNA分析は非常に強力なツールになる。しかしながら、環境DNA分析に必要なDNA配列データベースの整備や網羅的な調査データの蓄積が十分にされていないのが現状である。
そこで、私たちは水生昆虫を含む節足動物のユニバーサルプライマーgInsectのためのDNA配列データベースを拡充するとともに、節足動物の地域別多様性を明らかにすることを目的とした。全国の湖や河川、海などの61地点から得られた環境DNAをDNAメタバーコディング法で解析し、網羅的に16S rRNAの部分配列を取得した。得られた配列の中から既知の配列と配列相同性が97%以下の配列を抽出し、系統推定を行った。
その結果、データベースに登録されていない新規配列を580配列(ハエ目:158配列、コウチュウ目:30配列、カメムシ目:20配列など)取得した。また、このデータベースを使用し、多様性解析を行った結果、環境別・地域別に節足動物の生物相を明確に分けられた。さらに、湖や海と比較して、河川から検出された節足動物由来のOTU数が約1.6倍と多く、また各生物種が均等に存在していることが示唆された。今後は、多地点の環境DNAを解析することでDNA配列データを蓄積するとともに高解像度の節足動物の生態調査を行いたいと考えている。