| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-258  (Poster presentation)

トラップから遺伝解析まで-プロピレングリコールは昆虫のAll in One保存液となるか
From trap to genetic analysis —Can propylene glycol be an all-round solution for insect samples?—

*中村祥子, 田村繁明, 加賀谷悦子, 滝久智(森林総研)
*Shoko NAKAMURA, Shigeaki Tamura, Etsuko Kagaya, Hisatomo Taki(FFPRI)

大量の昆虫を効率よく捕獲するトラップでは、トラップ内での捕食や逃避を防止し、サンプルの腐敗を抑える液体を用いる。プロピレングリコール(PG)は、粘性が高く揮発性に乏しいことや、殺菌作用を持つことから、トラップでの用途に適した性質を備える。PGはまた、脱水性が高くDNAの保存性にも優れている可能性があるが、その評価は十分ではない。トラップから保存までをPGだけで済ませられれば、野外調査を大幅に省力化できる。そこで本報告は、昆虫DNAの保存性を、PGと、昆虫の捕殺・保存によく用いられるエタノールの間で比較することを目的とした。ハエ目、コウチュウ目、ハチ目の一部の昆虫種を対象とし、保存液に99.5%エタノールあるいは98.0% PGを使用した際のPCR成功率とDNAの断片化の進行度を、室温保存2週間後と6ヶ月以降に比較した。DNAの抽出には市販キットのDNeasy Blood & Tissue KitとPrepMan Ultraを使用し、PCRにはミトコンドリアDNAのCO1領域のバーコーディングに一般に用いられるプライマー2種を使用した。DNAのPCR増幅の成否は、アガロースゲル電気泳動後のバンドの輝度により判定し、輝度がラダーマーカーより高い場合を成功とみなした。DNAの断片化の進行度は、抽出したDNAのアガロースゲル電気泳動から、核DNAまたはミトコンドリアDNAのサイズのバンドの有無から判定した。これらより、昆虫の分類群や抽出キットごとに保存液としてのPGを評価し、調査目的に応じた適切な保存液について議論する。


日本生態学会