| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-260  (Poster presentation)

茨城県の海岸域において記録されたハチ類について
Wasps and bees recorded from coastal areas of Ibaraki Prefecture

*井手竜也(国立科学博物館)
*Tatsuya IDE(Nat. Mus. Nat. Sci.)

 日本は国土面積に対する海岸線の延長が世界有数であり、海岸域には砂浜や崖地、そこに自生する海浜性植物などを基盤とした、独自の豊かな自然環境が発達している。陸上で広く繁栄している昆虫類にとっても、海岸域は貴重な生息域と考えられるが、その実態は他の陸域環境と比べるとあまり明らかになっていない。一方で、海岸域の自然環境は人による改変によって衰退し続けており、多くの海浜性昆虫が、その存在を知られないままに、生息域とともに消滅の危機に瀕している可能性がある。

 そこで本研究では、海岸域における海浜性昆虫の多様性について基礎情報を蓄積するため、乾燥標本、DNA資料および生態情報の収集を基盤としたインベントリー調査を実施することとした。調査は、海浜性昆虫の中でも高い割合を占めるハチ目昆虫を対象とした。ハチ類の多くは訪花性があることから、ハチ類の多様性は海浜性植物との関連性も高いと考えられたため、ハチが訪花していた場合には、その植物名も記録することとした。

 今回調査を行った茨城県は、太平洋に面した南北に長い海岸域をもち、複数の海浜性植物の国内における南限や北限とされているなど、貴重な海岸域環境を有している。この海岸域のうち6地点で、2018年4~9月に調査を実施した。その結果、ミツバチ科やコハナバチ科といったハナバチ類や、ギングチバチ科、クモバチ科、ツチバチ科といったカリバチ類など、17科73種のハチ類が得られた。これらは、営巣のために砂地を好んで生息するものが多く、海岸域の砂浜がこれらのハチ類にとって重要な役割を果たしていることが確認された。


日本生態学会