| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-262 (Poster presentation)
東日本大震災に伴う東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故では福島県浜通りを中心とした12市町村に避難指示が出され、多くの住民が避難を余儀なくされた。これらの地域では営農が中断され、その後表土剥ぎ及び客土といった大規模な除染作業が行われた。このような農業生産環境の変化は、過去に例のない人為的な生態系攪乱である。これらの地域では、現在、徐々に水稲作付けが再開されてきている。しかし、このような環境変化が水田生物の多様性へ及ぼす影響については十分に評価されていない。そこで、水田環境の重要な指標種の一つであるトウキョウダルマガエルを対象に、営農再開後の生息状況の変化を調査した。
2016~2018年、福島県相馬郡飯舘村の旧避難指示区域の水田でトウキョウダルマガエルの生息状況調査を実施した。震災前の2008、2009年の調査では対象地区全てで本種の生息が確認されたが、2016年は調査5地区(作付け再開1年目3地区、4年目2地区)全てで確認されなかった。水稲作付けを再開・継続した2地区のうち1地区は2017、2018年に、1地区は2018年に生息が確認された。また、2018年に作付けを再開した別地区の水田でも確認された。本種は主に水田で繁殖することから、震災後の再確認に時間を要したのは、広範囲の水稲作付け中断が影響したものと考えられた。
避難指示を受け営農を中断した地域と避難指示を受けず営農を中断していない地域を比較することは、生物多様性回復のために必要な要因解明に対して極めて有用と考えられることから、今後とも、周辺環境の影響を考慮するとともに、他の水田生物もあわせ調査を継続する予定である。